自分の無力、社会の虚ろ(書評:ストレンジ・デイズ)

ストレンジ・デイズ」 村上龍 講談社文庫

最近小説を読んでなかったのでとりあえず村上龍

表現:5 展開:4 ユーモア:2 総合評価:4

 

目次をみたときに曲名とバンド名が並んでいるので、

重松清の「あの歌がきこえる」みたいな内容なのかと思ったが、そうではなかった。

くわしくないがストレンジ・デイズというのもドアーズの曲らしい。

 

主人公の反町は自分のやってきた仕事に意義を見出せなくなって精神病みたいになってしまい、家族と別居中。

そんなときに深夜のコンビニでトラック運転手のジュンコと出会う。

 

村上龍が好きだといって何度も触れてきている割に、

実は自分半分くらいしか作品を読んでいない。

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作品の設定に触れたとき、

限りなく透明に近いブルー」みたいなくしゃくしゃした話なのかと警戒したのだが、

特有の救いようの無さを継承しつつ、「希望の国エクソダス」とか「半島を出よ」とかの

社会への警鐘鳴らしを合わせた良作だと思った。

 

さて作品だが、

主人公反町の精神崩壊の理由は音楽プロデューサーとしての自分の仕事が、

ただ無価値のものを社会に送り出すだけで、

本物の才能ある人の邪魔になっていると気づいたからだった。

反町は部屋にあった大量のCDやらをすべて捨てるのだが、

無意識に捨てられない15枚があって、

それらが目次のタイトルになっている。

 

反町はコンビニで出会ったジュンコにその曲のテープを渡すことでストーリーが動き出す。

ジュンコは本物の演技の才能をもちつつも、

それを活かすことなくトラックの運転手に甘んじている。

 

今までの自分の仕事への反発からか、反町はジュンコを表舞台に出してやりたいと願う。

しかし、ジュンコと近づくほどに

自分がいかに才能を持たない無力の人間であるかを痛切に感じるようになり、

彼女をプロデュースすることに迷いをもつ。

 

そのあたりの心理描写やジュンコの演技するシーンで現場の空気が一変する描写が巧みで引き込まれてしまった。

映像化不可能な文章でしか表現できない情景が見事に描かれている。

 

惜しむのはストーリーがこれからどうなる、ということろで終わってしまうところ。

まぁ作品の中心は反町の心理描写にあるとおもわれるので致し方ないか。

 

村上龍の作品はいつも社会の問題を考えさせられる。

 

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