現実は強い。どうすれば笑い飛ばせるのか。(書評:砂漠)

「砂漠」 伊坂幸太郎 実業之日本社

最近読んだわけではないが、伊坂作品について触れたいと思ったので

表現:4 展開:5 ユーモア:5 総合評価:5

 

伊坂幸太郎の良い点。

・現実に抗いたいけど実際はそう簡単じゃなかった...と思わせつつ、抗う姿勢を示すところ

・偉人の言葉やトリビアなどあらゆる知識が自然と詰め込まれているところ

・自分の地元、仙台を舞台にした作品が多いこと

 

自分は伊坂幸太郎が好きです。

分類こそミステリー作家になるのかもしれないけれど、

単純に彼の地の文、世界観やキャラが好きです。

 

なかでもこの「砂漠」はかなりお気に入り。

非常に読みやすいながらもいろんな教養やユーモアがちりばめられていて、

ニヤニヤしながらいろんなことを考えさせられる作品です。

伊坂幸太郎の作品は映画化されているものも多いなか、

なぜこれは映像化されないのかまったくわからん。

ドラマとかに向いてると思うのだけど...と思ったが、

冷静に鑑みると本気で描写しないと陳腐なドラマになってしまう点があって諦めた。

 

この作品は4年間の大学生活を舞台にした作品で、

主人公とその友人たちの出会いから卒業までのストーリーです。

彼らの生活自体はすごく大学生っぽくって共感でき、

小説によくある、むず痒い発言や展開はない。

友人の1人がエスパーを使えるというとんでも設定があるものの、

決してそれに乗じたSFやおふざけ展開になるわけでもない。

クライマックスで4年間の生活がひとつながりになっていく伊坂節にはご期待である。

 

本の冒頭は次の引用で始まる。

ぼくは砂漠についてすでに多くを語った。

 ところで、これ以上砂漠を語るに先立って、

  ある一つのオアシスについて語りたいと思う。

      『人間の土地』 サン=テグジュペリ

サン=テグジュペリは「星の王子さま」で有名なヒト。

作中で、大学というのは社会という「砂漠」に囲まれた「オアシス」だ、

という記述がある。

登場人物たちはオアシスのなかで、けだるげに暮らしつつも、

社会に対する不安や怒りを抱えていて、それらに対峙することになる。

現実というのは理不尽で残酷だったりするのだが、

それはどうしたって向き合わなくちゃいけない。

彼らは現実に打ちのめされつつ時を過ごすのである。

一方で、みんなで集まって馬鹿な話をしたり、麻雀したり、交際したり、

そんな大学生臭さがとてもよく描写されているのである。

 

思いがけず、この作品は生き抜く力強さを教えてくれる気がする。

どうにでも答えられそうな難題(幸せとは?とか、科学とは?とか)に対して、

伊坂幸太郎の作品はときに、鳥が羽ばたいていくように鮮やかなヒントを与えてくれる気がする。

 

 最後に、

自分も西嶋のように平和を積み重ねるような人間でありたいと思う。

 

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